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東欧から日本への木材調達に 新しい法的リスク

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東欧のカルパチア山脈は、日本人にとって縁遠いところに思われるかもしれないが、その太古の から盗伐された木材が日本の住宅産業のあらゆるところで使われている。ルーマニアおよびウクライナからの新しい報告で欧州最大手の木材加工業者による広範囲な違法伐採、腐敗、贈賄行為について明らかになった。ヨーロッパ大陸最大のクマ、オオカミ、オオヤマネコの個体群および同地域の山村住民の生活が脅かされている。この違法伐採木材の多くは日本の最大手の商社によって買い付けられ、日本全国に流通している。 日本の新しい「合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律」(通称「クリーンウッド法」)の下で、登録制度に参加する日本の輸入業者は「合法伐採木材等の利用の確保」のための措置を取ることになっている

日本の商社の多くはクリーンウッド法および自らの「企業の社会的責任」(CSR)に関する方針を遵守するためにデュー・ディリジェンスに関する社内方針を策定している。日本の大手の輸入業者は、東欧からの違法木材調達の重大な影響について少なくとも2年前から知っているにもかかわらず、同地域からの高リスク木材を輸入し続けている。日本への輸入は継続的な違法伐採と腐敗に拍車をかけ続け、意味ある改革が根付くことを妨げている。

背景

日本の輸入業者はルーマニアとウクライナにおける違法伐採の高いリスクについて数年前から認識している。2016年にEIAは「偽上の住宅:日本の新築住宅の犠牲になる欧州の原生林」と題する報告書を発表し、欧州第2位の製材業者であるオーストリアのHolzindustrie Schweighofer(シュバイクホファー)社に木材を供給するルーマニア国内業者による広範囲な違法伐採について詳細に報告した。EIAの調査でシュバイクホファー社が1000社以上の個別の供給業者からルーマニア産丸太を調達しており、多くの場合、これらの供給業者が樹木を違法に伐採し、国立公園や他の保護地域、あるいは住民から違法に収奪された土地から樹木を切り出ししていることが判明した。EIAの報告書は、シュバイクホファー社による違法木材調達に関してルーマニアおよび周辺国で数年間、マスコミによる報道が行われた後に出された。EIAの調査でシュバイクホファー社の輸出の50%が日本向けであり、日本の最大級の商社による製材と集成材の輸入からなっていたことが判明した(表1参照)。

2016年にEIAは日本でシュバイクホファー社から最も多くの木材を調達している企業にこの報告書を直接手渡した。 2017年2月に森林管理協議会(FSC)は、違法木材調達の「明らかで説得力ある証拠」があると判定したFSC専門家パネルの詳細な報告書を受けて、シュバイクホファー社との関係を断った。しかしPEFC森林認証プログラム(PEFC)は、複数の苦情を受けたにもかかわらず、シュバイクホファー社の認証を維持している。PEFCが有効な執行メカニズムを持たず、ポリシー違反の圧倒的な証拠を示されても行動を怠っていることは、この制度が空虚で意味のないものであることを明らかにしている。

ルーマニアの最新動向

2018年5月にルーマニアの警察は、シュバイクホファー社に対する違法伐採、脱税および組織犯罪との繋がりに関する数年に及ぶ捜査の一環として同社の施設及び供給業者への手入れを行った。政府は同社による国家財政に対する被害額を2500万ドルと見積もった。この手入れで、2015年に始まったシュバイクホファー社に対するルーマニア反社会的勢力取締当局による捜査が続いていることが確認された。

2018年7月にEIAは新しい調査報告書を発表し、シュバイクホファー社が未だにルーマニアの国立公園から木材を調達していることを明らかにした。5年以上の間、シュバイクホファー社は国立公園から木材を調達していないと主張し続けてきた。しかし、シュバイクホファー社はルーマニアにおける木材供給の半分近くに関して実際の供給元の森林までの丸太のトレーサビリティを確保できていない。

シュバイクホファー社はルーマニア産丸太の取扱量の半分近くを未だに第三者の丸太集積場、つまり、他の複数の企業から丸太を買い付ける独立系の供給業者から買い付けている。 この木材に関して、シュバイクホファー社は供給元の森林までのトレーサビリティを確保できず、望ましくない供給元もしくは国立公園などの保護地域からの木材を排除できない。 ルーマニアの法律では、国立公園における限定的な伐採が認められているが、EIAの現場調査では、二つの国立公園において違法で環境破壊的な伐採が行われている例が見つかった。

EIAの最新の調査では、2017年1月から2018年6月の18ヶ月にかけてシュバイクホファー社の丸太供給業者が、この二つの国立公園から35,000m3もの木材を運搬したことが判明した。ルーマニアにおけるシュバイクホファー社の最大の木材供給業者の一つはFrasinul社と呼ばれている。Frasinul社は国立公園内の多数の現場で伐採を行い、その近くで多数の集積を運営し、そこからの丸太をシュバイクホファー社に販売している。 Frasinul社には法的トラブルの歴史があり、そのCEOは2014年以来、ルーマニアの汚職取締当局の捜査を受けている

ウクライナ:広範囲の違法伐採と高いレベルの腐敗

同じく2018年7月にロンドンを本拠地とするNGOであるEarthsightがシュバイクホファー社および他の欧州の大企業と取引のあるウクライナ森林セクターの広範囲の違法伐採と腐敗について詳述する包括的な報告書を発表した日本企業がシュバイクホファー社のルーマニアからの輸出の約半分を買っていた長年の間、シュバイクホファー社がウクライナ産丸太を大量にルーマニアに輸入していたことがウクライナとルーマニアの税関データから明らかになった。EIAは、嫌疑をかけられた欧州の他の大企業の通関データを入手できなかったので、これらの企業もウクライナの違法伐採木材を日本に売っていたかどうか断言できない。

調査により、ウクライナの森林の4分の3を管理する同国の国営企業によって生産される木材の40%が本来は病害の伝播を止めることを意図した、いわゆる衛生伐採を濫用して違法に伐採されていることが判明した。

ウクライナの最大の木材生産地の州の林業当局の幹部が組織的な違法伐採・木材輸出に関する大掛かりな刑事捜査の対象となっていることがEarthsightの掘り起こした裁判記録から明らかになった。ウクライナ国家森林当局の元トップViktor Sivets氏は廉価な木材へのアクセスと引き換えに海外の丸太バイヤーから3000万ユーロ以上の賄賂を受け取った疑いで起訴され、逃亡している。シュバイクホファー社はこの汚職疑惑への関与が具体的に疑われている唯一の欧州の大企業として、他社と一線を画している。

欧州の最大手の木材加工業者数社がこの違法木材の主な買い手であることをEarthsightが突き止めた。2017年のウクライナの丸太輸出禁止令の本格的施行まで、シュバイクホファー社は、断然、ウクライナ産木材の最大の輸入業者だった。この木材はシュバイクホファー社のルーマニア国内のウクライナ国境沿いの製材所に供給され、シュバイクホファー社はこのウクライナ産木材の多くを日本向けに販売した。シュバイクホファー社の工場は、日本の住宅市場の要求を満たすために特別に設計された集成材製造ラインを設置したことを誇っていた。

欧州の全ての大手バイヤー企業は、このような捜査の対象となっている国営伐採企業から大量の木材を輸入し続けている。これらの企業の多くは、丸太輸出禁止令にかかわらず、質の低い「薪」用の丸太の輸出を許す抜け穴を濫用して相当量の丸太を輸入し続けている。

ウクライナは、クマ、オオカミ、オオヤマネコ、バイソンなどの希少動物の生息する欧州大陸に残された最大規模の森林の一部を擁している。EUへの輸入はこれらの森林を脅かしているだけでなく、ウクライナにおける法の支配の確立に向けた取り組みも台無しにしていることをEarthsightの報告書が示している。

ウクライナは世界で最も深刻な汚職問題と戦い続けている国の一つである。Earthsightの報告書は、ウクライナで伐採から輸出に至るまで木材サプライチェーンのあらゆる段階で法律違反が起こっている状況を明らかにしている。憂慮すべきことに、Earthsightは、違法行為が森林管理協議会(FSC)認証林においても非認証林と同じぐらい一般化していることを明らかにし、腐敗が蔓延して法の支配が脆弱な環境において森林認証が違法伐採を抑制する効果について疑問を投げかけた。

EUの顧客は取扱をやめているが、日本企業は買い続けている

EIAがシュバイクホファー社による広範囲な違法木材調達に関する所見を初めて公表してからの2年間にわたり、シュバイクホファー社のルーマニア国内の工場から日本への輸入は平坦に推移している。2017年には170億円以上に上った同輸入額はシュバイクホファー社の全世界への輸出額の半分以上を占める。ルーマニアの税関統計によれば、2015年から2017年までの間、シュバイクホファー社の主要な日本の顧客は同社からの輸入額を減らしていない。そのうち、双日一社だけが同社からの輸入額を半減させたようである(表2)。

この同じ期間にオーストリアのSPAR社、英国のBrico Dépôt社、ドイツのHornbach社、フランスのLeroy Merlin社など、シュバイクホファー社の名だたる欧州の顧客企業の過半数は同社のルーマニアからの木材の購入を停止している。日本の輸入業者の無為無策は、デュー・ディリジェンスに関する社内規程の策定と遵守に関する日本の最大手商社のコミットおよび日本の新しいクリーンウッド法の施行に関する日本政府のコミットへの疑問を抱かせる。

住友林業はシュバイクホファー社の日本での第2位の得意先である。住友林業はクリーンウッド法の登録制度への参加を発表した最初の日本企業であり「仕入先が合法的に伐採された木材のみを供給できる」ことを確認していると主張している。同社のウェブサイトは、この調達方針の実施の例として、ルーマニアのシュバイクホファー社の現場視察を挙げている。しかし、住友林業の視察団はルーマニア訪問時に主要なNGOもしくはメディアとは面談せず、仕入先であるシュバイクホファー社の案内で工場見学や直接丸太を供給する現場の見学を行ったに過ぎない。ルーマニアのシュバイクホファー社の木材の20%しかルーマニアの森林から直接仕入れられていないにもかかわらず、住友林業は、特に同社の供給量の残り80%に該当するウクライナのような高リスク国などからの合法性の問題に関して何も報告していない。

伊藤忠建材と双日建材もシュバイクホファー社の大手得意先である。近年、両社ともデュー・ディリジェンス方針を策定し、特にロシアやサラワクなどの地域の高リスク木材の供給元から別の仕入先に切り替えることに関して有意な進展を遂げている。しかし、残念ながらルーマニアの税関データを見る限り、2017年にシュバイクホファー社からの直接の木材調達を減らしたのは双日だけのようである。

日本のクリーンウッド法では、輸入業者や木材業者は合法木材の利用を確保するデュー・ディリジェンスの実施のために自主的に登録することができる。2018年7月現在、クリーンウッド法の下で57社が「第一種木材関連事業」、つまり輸入業者か国内生産者として最初に木材を日本市場で販売する業者として登録されている。

日本にはシュバイクホファー社からオウシュウトウヒ(ホワイトウッド)材とアカマツ(レッドウッド)材がラミナか、木片の縁を接着剤で合わせた集成材の梁や柱の形で輸入されている。これらの輸入材は、主に日本の木造住宅産業において、多くの場合は国産の杉材で代替可能な用途で使われている。従って、東欧からの安い違法木材の輸入は、国内生産者に直接、価格の切り下げを迫り、日本の森林所有者が日本市場で正当な対価を得ることを難しくしている。

日本のクリーンウッド法は違法木材の輸入もしくはデュー・ディリジェンス方針の実施の瑕疵に対する罰則規定を欠いている。法が企業に課すことのできる最も重いペナルティーは、登録事業のリストから外すことである。ここで示した新しい証拠は、シュバイクホファー社のルーマニアとウクライナからの高リスク木材を輸入し続ける企業に対して、そのような措置を取る必要があるかもしれないことを示している。

結論

過去十年間、日本のバイヤーはシュバイクホファー社のルーマニアおよびウクライナにおける操業の最大の支援者となってきた。今も続く輸入は同地域で違法伐採に拍車を掛け続け、必要な改革が定着することを妨げてきた。

阪和興業、住友林業、伊藤忠建材など大手商社はシュバイクホファー社からのいかなる購入も直ちにやめるべきである。シュバイクホファー社がルーマニア産およびウクライナ産の丸太の調達で真のトレーサビリティを確保してこなかったことは、同社が未知の供給元からの大量の木材のリスクに晒され続けていること、そしてヨーロッパの最も生物多様性の高い森林での違法で持続不可能な伐採に拍車をかけている可能性が高いことを意味する。日本市場が門戸を開いている限り、シュバイクホファー社は違法木材を排除する真の改革を実施する必然性を感じる可能性は低い。

FSCとPEFCがウクライナとルーマニアで伐採の合法性を確保できてこなかったことは、認証制度だけでは、企業による合法木材調達のための堅牢なデュー・ディリジェンスの代わりにはならないことを裏付けている。FSCなどの認証制度は、真のトレーサビリティと透明性を確保するようになるまで、違法伐採と腐敗のリスクの高い地域で法令遵守を支える手段として、ほとんど有効性をもたないだろう。

日本の最大手の商社は、シュバイクホファー社から木材を輸入し続けることによりヨーロッパに残された最後の太古の森林に壊滅的な影響を及ぼす東欧での違法伐採、贈収賄、腐敗に日本の消費者を知らないうちに加担させてきた。日本の人々も、東欧の森林に依存する住民も、もっと大切に扱われて然るべきである。

提言

  1. 日本企業は、シュバイクホファー社が木材調達における物理的なトレーサビリティ制度を確立し、そのトレーサビリ ティを完全に証明できるまでは、即座に同社からの調達を止めるべきである。
  2. シュバイクホファー社から木材を輸入する日本企業は、自社の調達方針全般とその透明性を改善し、自らの調達方針 への準拠をどう確認しているかを説明できなければならない。
  3. 日本政府は、主要な日本の輸入企業の調達方針とその実施状況を分析し、それらの方針がクリーンウッド法の下で求められている合法木材のみの購入を確実にしているかどうかを評価しなければならない。その上で日本政府はクリーンウッド法に準拠していない、伐採地の法令に違反して調達された木材を購入する企業に警告をすべきである。
  4. 日本政府は、主要な日本の輸入企業が自らの調達方針が法律で求められる基準を満たすかどうかを検討しやすくなるよう、クリーンウッド法の実施についての詳細なガイダンスを提供すべきである。

詳細については

ルーマニア北部ロドナ山脈国立公園での違法伐採(2017年10月)
Behind The Scenes: How Log Yards Hide the Destruction of Europe's Ancient Forests

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